■日々の積み重ねが成長の源■
当社は、創業から今年で丁度30年となる、電気亜鉛メッキを主体とする金属表面処理会社であります。富士山を北に仰ぎ駿河湾を南に望む富士市の北西部、水資源の豊富な地域に立地し、県下有数の工業地帯の中で、自動車部品・ガス機器部品・一般機械部品の表面処理の分野で確かな地歩を築くべく営々と業務に励んでおります。取引先会社から委託される仕事を選り好みせず積極的に取り組んできた所為化、お陰さまで、バブル崩壊後の景気停滞化の昨今でも僅かながらですが業績は伸びております。
従業員数は現在20名、うち障害者15名、健常者5名で、4人中3人が障害者で構成されています。障害者が従事する主な仕事は、メッキする部品の治具(ハンガー)への吊り作業、部品を吊り終えた治具をメッキ装置の槽内へ投入するためコンベアに架ける作業、処理を終えた装置から出てきた治具を外しメッキされた部品を回収する作業、更に、メッキされた部品を仕分け梱包する作業等と、まさに当社業務の本髄をなす部分であります。当初これらの仕事は健常者が主体を占めていたわけですが、地味な内容のため一通り習熟しないうちに飽きてしまったり、また慣れてくると几帳面さや丁寧さを疎かにする傾向が現れてきたりで、結局、地道に且つひたむきに根気強くこれらの仕事をこなす障害者が主軸を背負うようになった次第です。
今では、健常者は障害者が担当する主互程の前後や周辺で、入出庫管理、検品納入準備、配送等と云った仕事を受け持っている状況で、主役は障害者、健常者はそのアシスタント的役割といっても過言ではないくらいです。
このように障害者であっても(高齢者の場合も同様であろうと思われますが)、窺える能力、適正等を含めたその人なりに見合った業務を用意すれば、同じ業務においても健常者に勝るとも劣らない仕事振りを発揮するものです。私共はこのことを具さに見て参りました。要は、当人に合った仕事を如何に見出してあげられるか、また、そのような仕事をスムーズに用意してあげられるかにかかっていると思います。ただ、ここまで到ると経済的な引き合いの問題が俎上にのぼってきますので、障害者の雇用をすすめておられる各社も同様かと推察致しますが、一社だけの努力では如何ともし難い限界が厳然と存在します。
企業体である以上、利益を生み出すことが至上命題でありますので、経済上大きなゆとりがあって障害者雇用の趣旨の実現の寄与をしている稀少な法人を除けば、大多数の事業所は、コストの観点を充分弁えたうえで当該事業所においての障害者の適職を用意しているのが偽らざるところではないでしょうか。
本当は、学校教育の場において障害児と健常児を普通学級で一緒に生活さすことの教育的、ひいては社会的意義が言及されるように、健常者同僚を人件費等の論点抜きに迎えることが理想であり、それでこそ人格をもった法人として事業活動だけではない社会的役割をも果たしたことになるのでしょうが…。
この点に関しては、障害者雇用に伴う援助者の配置等のコスト増を、社会的費用として認めるより深いコンセンサスが、法人を含めた社会全体の構成員間で確立する迄は、現行の国や地方自治体等による助成金制度の拡充・充実も負担の公正確保のため未だ暫くの間止むを得ないものと思われます。
実は現在当社では障害者社員の通勤対策に心を砕いており、近々マイクロバスによる朝夕の送迎の開始を予定、また送迎では困難な遠距離からの就職希望者に対する借上寮の増設等を検討しているところです。
「福祉の案内」(平成9年刊 日本障害者福祉協会版)より |